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ウェザーニューズ、2016 年の北極海の海氷に関する振り返りを発表

冬季の海氷域面積は過去最小、夏季は過去2番目の小ささ

〜北極海の海氷の観測網充実のため、超小型独自衛星を来年打ち上げ〜

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 株式会社ウェザーニューズ(本社:千葉市美浜区、代表取締役社長:草開千仁)のグローバルアイスセン ターは 2016 年の北極海の海氷に関する振り返りを発表しました。今年は北極圏の温暖化の影響で海氷の減 少が進み、年間最大面積は過去最小の 1396 万 km2(2 月 29 日)を記録し、年間最小面積も 9 月に過去 2 番 目の小ささの 414 万 km2 となりました。一方、北極海北東航路の開通(※1)期間は航路の要所であるラプ テフ海の海氷が解けずに残ったことが影響し、9 月 24 日〜10 月 7 日までの約 2 週間と例年より短くなりま した。
 昨今、北極海では北極海航路を利用した貨物輸送のみならず資源開発も始まっており、船舶の通航が活 発化しています。当社は 2011 年より北極海を航行する船舶に対し、安全運航を支援する『Polar Routeing Service』を提供してまいりました。詳細な海氷情報の重要性が増す中、海氷の予測精度、およびサービス 品質向上のために、北極海の海氷を観測する自社の超小型衛星『WNISAT-1R』を 2017 年に打ち上げる予定 です。

◆温暖化の影響で北極海の海氷が減少、冬季は過去最小、夏季は過去 2 番目の小ささを記録

図 1.2016 年の最小面積となった 9 月 7 日の北極海の海氷分布
図 1.2016 年の最小面積となった 9 月 7 日の北極海の海氷分布

 2016 年の北極海の海氷は減少傾向が続いています。年間最大面積は、過去最小の 1396 万 km2(2 月 29 日)を記録しました。また、9 月の年間最小 面積は過去 2 番目の小ささの 414 万 km2 となりま した。これは近年の北極圏の温暖化が影響してい ます。図 3 は北極圏における今年 9 月の平均気温 の平年差を示しており、北極海全域に渡って平年 と比べて高温となっていることがわかります。
 海氷域面積が減少傾向にある一方で、ロシア側 の北東航路の開通期間は 9 月 24 日〜10 月 7 日の 約 2 週間と、ここ数年の開通期間よりも短くなり ました。理由としては、航路開通の要所となるラ プテフ海の海氷が最後まで残ったことで、船舶が 海氷域に入る事なく全航路を通航できる期間が短 くなりました(※1)。島が多く結氷が進みやすい カナダ側の北西航路は、8 月 19 日から 9 月 10 日ま で、約 3 週間の開通となりました。

図 2.2012 年以降の海氷域面積の推移
図 2.2012 年以降の海氷域面積の推移
図 3.2016 年 9 月の平均気温の平年差
図 3.2016 年 9 月の平均気温の平年差
図 4.北極海北東航路(左)・北西航路(右)の開通期間
図 4.北極海北東航路(左)・北西航路(右)の開通期間

 今回、北東航路開通の障壁となったラプテフ海の海氷は、海氷観測において広く使われている受動マイ クロ波衛星(※2)では検知が難しい海氷でした。図 5 は 9 月 16 日のラプテフ海の受動マイクロ波衛星に よる解析図と可視衛星(※3)による観測画像を比べたものです。マイクロ波による解析では海氷が無い とされる箇所で、可視衛星画像では海氷が捉えられていることがわかります。

図 5.2016 年 9 月 16 日の北極海ラプテフ海における 受動マイクロ波観測衛星(GCOM-W)による海氷解析図(左)と可視衛星(Terra)による衛星画像(右)
図 5.2016 年 9 月 16 日の北極海ラプテフ海における
受動マイクロ波観測衛星(GCOM-W)による海氷解析図(左)と可視衛星(Terra)による衛星画像(右)

実際に該当海域を航行した弊社のサポート船からの写真(図 6)からも、当時、海氷が存在していたことがわかります。

図 6.2016 年 9 月 16 日に北極海ラプテフ海を航行した弊社サポート船による海氷の写真
図 6.2016 年 9 月 16 日に北極海ラプテフ海を航行した弊社サポート船による海氷の写真

◆自社衛星打ち上げによって観測網を充実、新たな観測方法確立に向けた試験観測も実施

図 7.2017 年打ち上げ予定の超小型独自衛星『WNISAT-1R』
図 7.2017 年打ち上げ予定の超小型独自衛星『WNISAT-1R』

 昨今、北極海では北極海航路による貨物輸送のみならず資源開発が活発化しており、プラント建設用の物資輸送やエネルギーの定期輸送が行われるため、北極海の海氷に関する詳細な情報把握の重要性が高まっています。
 現在、当社グローバルアイスセンターでは海氷の観測および予測のために複数の衛星データを取得していますが、北極海の海氷を観測する専用の可視衛星はなく、観測頻度や予測精度において課題がありました。当社は北極海を航行する船舶の安全運航を支援する『Polar Routeing Service』のサービス品質と海氷の予測精度を高めるため、2017年に独自の超小型衛星『WNISAT-1R』の打ち上げを予定しています。計6台の可視・近赤外カメラを搭載し、今回のラプテフ海の海氷のように受動マイクロ波観測衛星では捉えられない小さな海氷も観測可能となります。また、日照条件や天候に左右されない観測方法確立を目指し、GPS衛星などの反射波から海氷の分布や海面の状況を観測するGNSS-R(Global Navigation Satellite System - Reflectometry)技術を用いた試験観測を行います。
 今後、北極海は資源開発や北極海航路の有効性の観点からさらなる利用が見込まれます。当社はこれまでの北極海でのサービスノウハウに加え、独自衛星による観測情報を充実させ、北極海を航行する船舶の安全・効率運航をサポートしてまいります。

※1.開通の定義:海氷域に入ることなく全航路を通ることができると衛星観測データから判断される状況。
※2.受動マイクロ波衛星による観測の特徴
  観測対象物から放射されているマイクロ波(物の種類や状態によって異なる)を測る観測方法。
  可視衛星では観測困難な夜間や悪天候時にも観測可能だが、解像度が低い。
※3.可視衛星による観測の特徴
  太陽の光(人間の目に見えない紫外線や赤外線を含む)が物にあたり反射した光を測る観測方法。
  夜間や悪天候時には観測できないが、解像度が高くきめ細かい観測が可能。
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