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独自の気象・海象観測衛星「WNISAT-1R」が日本で初めてGNSS-Rのデータ取得に成功!
株式会社ウェザーニューズ(本社:千葉市美浜区、代表取締役社長:草開千仁)は、株式会社アクセルスペース(本社:東京都中央区、代表取締役:中村友哉)と共同で開発した独自の超小型衛星「WNISAT-1R」がGNSS-Rのデータ取得に成功したことを発表しました。これはイギリスのSSTL、アメリカのNASAに続く世界3番目の事例で、日本では初めての成功事例になります。地表面で反射したGPS衛星の反射波を用いることで、光学カメラでは観測できない夜間や曇天時でも地球表面の状態を捉えることが可能になり、光学カメラと併用することで新たな監視の目になり得ます。現在、30機を超えるGPS衛星が地球を周回しており、当社はこの反射波を活用することで、観測データが少ない海上の波や風、海氷の新たな観測に挑戦していきます。
GPS反射波の受信成功
GNSS-R(Global Navigation Satellite System - Reflectometry)は、地球表面で反射したGPS衛星に代表される測位衛星(GNSS衛星)の電波を受信し、解析することで地球表面の状態を観測する方法です(図1)。GPS衛星からの電波を利用するため、自ら電波を発する必要がなく、大きな電源を持たない小型衛星に向いています。加えて、雲の有無や明暗に左右されずに観測できることや、複数のGPS衛星からの電波を用いることで広域のデータを取得できるなどのメリットがあります。当社は、雲や昼夜に左右されない新たな気象・海象観測に挑戦するため、反射波の受信アンテナを実験的に「WNISAT-1R」に搭載しました(参考1)。その後、「WNISAT-1R」の打ち上げに成功し、今回「WNISAT-1R」の受信波からGNSS-Rの特徴であるDelay Doppler Map(DDM)を生成し、GNSS-Rのデータ取得成功を確認しました。
「WNISAT-1R」が受信したDDM概要
DDMは、横軸にGPS反射波を受信するまでにかかった時間、縦軸にドップラーシフト周波数(*)を用いて描画したグラフで、地球表面の状態を推測するために用いられます。受信時間とドップラーシフト周波数の広がりが大きくなるほど、地球表面の状態は“粗い”と推測できます。反射点が海面であれば、海面の乱れがわかるほか、風の強さと波の相関関係から、海上の風も推測することができます。 GPS反射波は、鏡のように平らな表面で鏡面反射をした場合、最短時間で「WNISAT-1R」に届きます。表面が乱れているほど乱反射する割合が多くなり、受信時間が遅くなる電波が増加します。したがって、遅い電波が混ざって横軸の受信時間に幅が出るほど、表面は乱れた状態であると考えられます。
また、「WNISAT-1R」は常に動いているため、反射点と受信点で周波数が変化します(ドップラーシフト)。このドップラーシフトが生じることで、「WNISAT-1R」の進行方向前方で反射した場合は周波数が高く、後方で反射した場合は周波数が低いという違いが生まれます(参考2)。このため、鏡面反射時よりも縦軸の周波数に広がりが見られる場合、表面が乱れていると推測できます。
図2は、位置が異なる2機の衛星A/BからのGPS反射波の受信に要した時間とドップラーシフト周波数を用いて生成したDDMです。Aを見ると、受信時間や周波数に広がりがなくコンパクトであることから、Aの反射点の表面は比較的穏やかであると推測されます。一方、Bでは両方に広がりが見られることから、海面が乱れていると考えられます。図3は、BのGPS衛星の位置と反射の強さをマッピングした図です。
ウェザーニューズは、これらの解析結果にGPS衛星との位置関係や受信条件を用いて適切に正規化することで、表面の粗さを解析できると考えています。今後、観測事例を増やして比較学習を重ねることで、海面の波や風の強さ、海氷の情報を航海の安全に寄与できるか海運会社と協力して確認していきます。
* ドップラーシフト周波数:ドップラーシフト周波数は、ドップラー効果による電波の周波数の変化量です。ドップラー効果とは、電波や光、音波などの波の発生源と観測者の間に速度差がある場合に、波の周波数が異なって観測される現象です。発生源と観測者が近づいている場合には周波数は高く、遠ざかっている場合には低く観測されます。
参考情報
関連するプレスリリース
・2017年8月9日「WNISAT-1R」が初画像取得
/news/17638/
・2017年7月18日「WNISAT-1R」打ち上げ成功
/news/17208/